主体性と目的意識
【プランドハプンスタンス】
John D. Krumbolts Stanford Univ.
予期せぬ出来事が個人のキャリアを左右する
予期せぬ出来事を避けるのではなく、起きたことを最大限に活用する
偶然を積極的につくりだし、キャリア形成の力にすることが重要
好奇心:新しい学習機会の模索
持続性:めげない努力
楽観性:新しい機会を「実現可能」と捉える
柔軟性:信念、概念、態度、行動を変える
リスク・テイキング:結果が不確実でも行動に移す
出典:慶應SFC花田ゼミHP
スタンフォード大学のクランボルツ教授が、アメリカのビジネスパーソンのキャリアを大規模調査した結果をまとめ、コンセプトとして抽出されたものが【プランドハプンスタンス】です。
それによると、意図しない、予期せぬ出来事が個人のキャリアの上には多発し、それに対してどういうスタンスを持つかが、キャリアが充実するか、しないのかの鍵だというのです。
会社が吸収合併された
親の介護が必要になり、フルタイムで働けなくなった。
こういう、意図せぬ、望まぬ、予期せぬことが起こるのがキャリアというわけです。Co-ducationはこういった【イベント】に対してもまたStrengthを活用して臨むのが一つの方法であると考えます。Strengthはいつでも、自分のキャリア形成の相棒なのです。
また、花田教授が大切だと提唱する視点も素晴らしいものです。
好奇心:新しい学習機会の模索
持続性:めげない努力
楽観性:新しい機会を「実現可能」と捉える
柔軟性:信念、概念、態度、行動を変える
リスク・テイキング:結果が不確実でも行動に移す
【主体性】
キャリアを充実させていく上でポイントとなるものに、プランドハプンスタンスのポイントに、さらに【主体性】というキーワードを追加したいと思います。主体性とは、予期せぬイベントも「自分の人生における出来事であり、自分に対処する責任があり、自分には対処する権限・能力があるとする」ことといえます。
会社が吸収合併された
親の介護が必要になり、フルタイムで働けなくなった。
このような状況が起きた時にも、「さて、自分自身はどうするか?」ということを考えることです。予期しない状況が起きた時に言い訳を探すのは簡単です。実際に自分自身には責任がなかったといえるようなこともあるでしょう。しかしそうであっても「さて、自分自身はどうするか?」ということを優先して考えられること。それがキャリアの充実をもたらす鍵となるものだと思います。
「さて、自分自身はどうするか?」を考えないことも出来ます。その方がある意味ラクかもしれません。しかし、そうしてしまったら自分のキャリアのイニシアチブを環境や他人に手放すことになってしまいます。環境や他人が自分のキャリアを完全に支配しているのだとしたら、その先に充実したキャリアがあるでしょうか?環境や他人が創りだした状況にさえ、何らかの変化を加えることはできるものです。「さて、自分自身はどうするか?」という姿勢によって。
今おかれている状況に変化を加える、状況を打開するという力は誰しもが必ず持っているものです。ただ自分自身の能力や実力といったものを過小評価していると現実的に打開していくことが難しくなってしまいます。しかし、必ず状況に変化を加えることはできるのです。
主体性について、とても分かりやすく書かれていて、深い理解と気づきを与えてくれる本として「7つの習慣」を挙げたいと思います。「7つの習慣」の第一の習慣は【主体性を発揮する】です。
【マズローの欲求階層説】
心理学者のマズローはその著書の中で、人間の欲求は大まかに階層をなしているという考えを提示しました。俗に言うマズローの欲求階層説です。(参考「完全なる人間」A.H.マズロー著)
マズローによれば、人は以下のような(緩い)階層構造をもった欲求を備えているということです。
生理的欲求→安全の欲求→所属の欲求→自我の欲求→自己実現の欲求。
低次の欲求が満たされてくれば高次の欲求の割合が高まってくる、高次の欲求が高まっていても低次の欲求が脅かされていれば、低次の欲求の割合がまた高くなる。これがマズローの基本的な主張の一つです。
お腹がすいていれば(生理的欲求が満たされていなければ)、まずお腹をいっぱいにしたいのが人間であり、しかし食べて満足すれば、友達との遊びや、仕事に向かっていく(所属の欲求や自我の欲求)。すごく簡略化していえばそういうことです。
私たちがマズローから学ぶべきことは「低次の欲求を満たす」重要性ではないでしょうか。有名企業に入りたいという欲求があればまずそれを満たしてあげる。お金持ちになりたいという欲求があればまずそれを全力で満たす。同僚から認められたいと思えば、まずその欲求を全力で満たす。それを満たすことで、次なる高次な欲求が出現してくるわけであって、それを満たさずに高次の欲求のみを重視しても、結局低次の欲求に本当の関心は向いているということになるのだと思います。
偉大な経営者は言います。お客様は神様だと。博愛が大事だと。世界レベルの問題に意識を持てと。しかし、彼等は、そういう境地までいける過程を経て、様々な低次の欲求を満たしてきたからこそ言えるのであって、いきなりそういう考えをもったわけでも、生まれたときからそんな高邁なる精神でやってきたわけでもないはずなのです。
だから、今自分が本当に欲していることを、ちゃんと満たしてあげること。それがとても大事なのだと思うのです。例えば名誉欲、自己顕示欲、場合によっては食欲、こういったものを私たちの暮らす社会は嫌ったり、妬んだりしているのが現実だと思います。自分自身の中にある名誉欲も、満たしてあげることを考えずに「そんな欲求は自分の中にはない」とか「そんな欲求は自分から排除しなければならない」とすることがとても多い。せめて「そういう欲求は自分は持っている」ということを認めるべきではないでしょうか。その上で、それをあえて満たさぬ努力をするか、満たす努力をしていくかは、一人ひとりの選択なのかもしれませんが。
低次の欲求を満たすことができれば、高次の欲求が立ち現れてきます。「絶対金持ちになってやる!」という利己的な動機から起業をし、成功した経営者も金持ちになってしまえば「金持ちになる」という動機ではもう頑張れない。しかしその頃には新しい高次の欲求が立ち現れてくるものなのでしょう。例えば、一緒に頑張ってきてくれた従業員のためとか、今まで支えてきてくれたお客さんのためとか、そういう人たちの幸せのために自分ができることをして恩返しをしたい!そんな風に考え始める。同じ事業を続けていっても目的意識や、動機というものは変化し、進化していくもののはずです。
初めから高邁なる、聖人のような目的意識や精神で歩き始める必要なんてないのだと思います。今、自分が本当に大切にしている欲求を満たしていく、満たせばまた高次の欲求が立ち現れる。それをまた満たす。その繰り返しによって、私たちの目的意識や意志というものは進化していくのではないでしょうか。
アルベルト・ゴア元米副大統領(1948年生まれ)が自分の人生のテーマを環境問題と定めたのは、彼が大統領選に敗北したのちで、すでに彼は50代に入っていました。生涯を捧げるに値する「これだ!」というテーマに若いうちに出会える人は幸運ですが、そんなに多くはないのかもしれません。しかし「これだ!」に近づいていくことは誰にもできることだろうと思います。
【成長の概念】
私たちが自分のキャリアを充実させ続けるために、成長というは何か?ということについて考えるておくことは有意義でしょう。
みなさんが思い浮かべる【成長のイメージ】は、左の図でしょうか?右の図でしょうか?
Co-ducationは、この二つのイメージの【両方】を成長の定義として持っているべきだと考えます。bからaへ、最短距離で、なるべく早く、なるべく効率的にたどり着くように努力をする。そういう成長はとても大事なものだと思います。
と同時に、右の図のような概念も持っているべきではないでしょうか。成長は一直線に進んでいくものではなく、壁にぶつかり、あっちにいったりこっちにいったり、試行錯誤しながらだんだんと【面積】が増えていく。人間としての幅や深みが増していく。
(中略)
国鉄を辞めてからも、無駄になったキャリアは一つもないと思っている。国鉄の次に勤めたマッキンゼーで、経営コンサルタントの視点を身に付けたおかげで、私はその後人事コンサルトを始める際、日本初の経営コンサルタント経験のある人事コンサルタントということで差別化を図ることができた。
マッキンゼーの後には、フランスのパリバ証券の関連会社で投資顧問をやったが、ここでは財務の基本的な知識と金融という組織の特殊性を学んだ。
(中略)
なにも私のようなやり方が唯一の正解だとは思わないし、人それぞれやり方はあると思うが、少なくとも私に関していえば、大学を卒業するときから人事コンサルタントというところに目標を絞っていたら、逆にいまのようになっていなかったのではないかと思う。最初からこれしかないと決めてしまうと、多くは非常に線の細いキャリアができあがってしまう。
「スローキャリア」 PHP研究所 高橋俊介著
【4つの箱 ~フューチャーサーチより】
成長の概念を検討する上で、Co-ducationが影響を受けているものは多数ありますが、その一つに「フューチャーサーチ」というものがあります。フューチャーサーチ自体は、社会活性化や組織変革の手法の一つですが、そこで語られるコンセプトの一つに【4つの箱】というものがあります。
これは人や組織の変化や成長を表す循環図なのですが
というように表されます。
人は何か新しい状況や、事実が現れた時否定することから始め、しかし否定しきれないほどの事実が目の前に積みあがり、カオス、混沌に入る。そしてカオスから、再生、リニューアルへとつながっていく。
人や組織が変化していくとき、そのプロセスの中にカオス、混沌があるということを知っておくことはとても有益ではないでしょうか。自分の面積を広げるチャンスが来た時、新しい方向性を見つけるチャンスが来た時、そういう時は一旦カオスが待っている。それを知っていれば、自分が混沌として、ストレスが高くて、不安で、不安定な状況にあるときに「これを抜ければ、リニューアルした自分になる!」と思えるのは支えになるでしょう。
【チクセントミハイの知見】
もう一つ、成長の概念とも関連しますが充実したキャリアを形成しようとした時に大変に参考になるであろうは、心理学者チクセントミハイの知見です。(参考「フロー体験 喜びの現象学」世界思想社
)
彼は時間を忘れ、我を忘れるほど没頭している時間:「フロー体験」について研究で有名になった人ですが、一つの明快なコンセプト図を私たちに与えてくれています。
彼は、フロー状態に入る際に【能力】と【難易度】のバランスが重要であることを発見しました。
能力が高すぎる場合→目標を高く設定する。責任範囲を広くとらえる。
難易度が高すぎる場合→目標を適切なレベルに抑える。助けを求める。
フロー状態にあれば、それ自体が「充実した時間」であるはずですから、充実したキャリアを築いていこうとする私たちにとってとても大切なものに違いありません。
またチクセントミハイはフロー状態の特徴として以下のものを挙げています。
1.目的が明確である
2.直接的なフィードバックが得られる
3.能力と難易度のバランスが取れている
4.集中できる環境にある5.自分で制御できている感覚が非常に強い
6.自我が意識から外れる
7.時間感覚がなくなる
私たちは、充実したキャリアを形成していこうとする時に、特に1~4を意識することは有意義でしょう。明確な目的を持ち、目的に向かって近づいているか遠ざかっているかのフィードバックが得られるようにし、能力と難易度のバランスをとりながら、集中して取り組むことが出来れば、その期間はかなり没入して仕事をしていけるはずです。
実際、コーチングなどで行われていることもこれに近いところがあります。その人の夢や目標を聞くことで目的を明確にし、どのような先行指標が高まれば目的を達成することができるかを考え、まず今の自分ができることはどのようなものかを検討し、それに集中して取り組むために、やらないこと、諦めることは何かなども一緒に考えていくわけです。もちろんこれは、セルフコーチングも可能です。
チクセントミハイは、フロー体験を経験すると「人はより複雑化する」と述べています。没頭して何かに取り組むことで、能力が高まったり視野が広がったりすることで、さらに豊かなキャリアを築いていくことができるといえるのではないでしょうか。
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